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遺言で必要となる印鑑について

  • 文責:代表 弁護士 西尾有司
  • 最終更新日:2023年2月24日

1 遺言と押印

遺言としては、多くの場合、自筆で作成する自筆証書遺言か、公証役場で作成する公正証書遺言の方式が用いられています。

このうち、自筆証書遺言については、遺言者自身が遺言書の全文、日付、名前を自書し、押印しなければ、有効な遺言とは扱ってもらえません。

平成31年の民法改正で、一部、財産目録のみ署名押印があれば自筆でなくても構わないという法律改正が行われましたが、それ以外はすべて自筆で書く必要があります。

自筆証書遺言については、押印は、有効な遺言として成立するための必要条件になります。

それでは、自筆証書遺言を作成するにあたっては、どのような印鑑(印章)を用いる必要があるのでしょうか。

2 どのような印鑑を用いることができるか

自筆証書遺言に用いることができる印鑑には、特段、制限はありません。

極端な話、遺言者の名字か名前が入っていれば、自筆証書遺言の印鑑として用いることができます。

もちろん、まったく違う人の名字や名前になっているのでしたら、押印の要件を満たさないこととなります。

また、花押のように、名字や名前を表示していない場合も、誰の印鑑であるかが判別できませんので、押印の要件を満たしません。

逆に言えば、遺言書の名字か名前を表示しているのでしたら、どのような印鑑であっても、押印の要件を満たすこととなります。

したがって、実印でなく、認印でも良いこととなりますし、シャチハタのようなものでも良いこととなります。

さらに、過去の裁判例では、遺言者の拇印や指印が行われた自筆証書遺言について、押印のあるものと扱うとしたものがあります。

このように、自筆証書遺言の印鑑については、広く有効性が認められていることとなります。

もっとも、どのような印鑑を用いることができるかについては、上記のとおりですが、どのような印鑑を用いるのが望ましいかについては、別に考える必要があります。

3 どのような印鑑を用いるのが望ましいか

自筆証書遺言について多い争いは、遺言を作成したのが本当に遺言者自身であるかどうかです。

この点についての争いが紛糾すると、裁判で争い、筆跡鑑定を行うことになってしまうこともあります。

このような紛争を防止するためには、自筆証書遺言の印鑑として、遺言者自身が作成したものであることを推定させるものを用いるのが望ましいこととなります。

この点、実印を用いると、印鑑証明書と照合することにより、遺言者自身が用いていた印鑑であることを公的に証明することができますので、望ましいかと思います。

ただ、遺言者が亡くなったあとは、市町村役場で印鑑証明書を取得することができなくなり、印鑑を照合することができなくなる可能性があります。

このことは、四日市市でも同様です。

対策としては、自筆証書遺言を作成した際に、印鑑証明書も添付して保管しておくことが考えられます。

他には、認印であっても、普段、銀行取引等で用いていたものを用いることが考えられます。

銀行等の払戻請求書等を取得し、そこで用いられている印鑑と照合することができれば、遺言者が普段用いていた印鑑であることが証明できる可能性があるためです。

反対に、このように、遺言者本人の印鑑と照合することができない印鑑については、自筆証書遺言に用いるのは望ましくないということができます。

拇印や指印についても、遺言者が亡くなったあとに、遺言者本人の拇印や指印であることを証明することは、実際のところ、非常に困難ですので、問題があると言えます。

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