遺言で相続分の指定が行われた場合
1 相続分の指定とは
遺言が残されていない場合は、民法の法定相続分の規定が適用されることになります。
民法の法定相続分では、同じ続柄の相続人については、均等の相続分を有するものとされています。
例えば、子が3名いる場合は、3名の子の法定相続分は、均等であるものとされます。
とはいえ、現実には、一部の子に多くの財産を取得させたいといった希望や、一部の子には財産をあまり取得させたくないといった要望を持たれる方もいらっしゃることと思います。
そのように、法定相続分に従った相続を望まない場合には、遺言により相続分を指定することができます。
このことを、指定相続分といいます。
相続分を指定する場合は、遺言で、次のような記載を行います。
遺言者は、次のとおり相続分を指定する。
妻A 6/8
子a 1/8
子b 1/8
また、被相続人は、遺言で第三者に相続分の指定を委託することもできます。
遺言を作成してから相続が発生するまでの状況を踏まえて、各自の相続分を指定したいと考える場合には、第三者に相続分の指定を委託することも考えられます。
もっとも、実際には、第三者への相続分の指定の委託が行われることは稀です。
2 一部の相続人について指定がある場合
妻A、子a、子b、子cが相続人となっている場合で、次のような相続分の指定が行われている場合は、どうなるのでしょうか。
遺言者は、子aの相続分を1/3と指定する。
このように、共同相続人の一部の者についてのみ相続分の指定があるときには、その者以外の相続人の相続分は、指定相続分以外の部分について、法定相続分を適用することにより決められます。
今回は、指定相続分以外の部分は、2/3です。
法定相続分については、妻Aが1/2、子bが1/4、子cが1/4です。
ですから、それぞれの相続分は、次のようになります。
妻A 2/3×1/2=1/3
子b 2/3×1/4=1/6
子c 2/3×1/4=1/6