相続財産調査
専門家に相続財産調査を依頼した方が良い理由
1 網羅的に調査できる可能性が高まる
専門家に相続財産調査を依頼すると、網羅的に調査できる可能性が高まります。
相続では、早い段階で、網羅的に情報を収集できる方が望ましいです。
遺産分割では、相続財産の全体像を踏まえて話し合いを行う方が、より公平かつ合理的な結論を導きやすいです。
相続手続でも、一度に相続財産を網羅的に名義変更できた方が、何度も書類を取得することを回避することができ、スムーズに手続を完了することができます。
このため、相続では、網羅的に調査を行う必要性が大きいです。
この点、個人で相続財産調査を行うと、調査に漏れが生じる可能性が高くなってしまい、網羅的な調査にならない可能性が高くなってしまいます。
漏れがある調査に基づいて遺産分割や名義変更を行ってしまうと、あとから追加で遺産分割協議や名義変更をやり直す必要が出てくる場合があります。
ただ、あとで追加で話し合いを行おうとしても、相続人同士の連絡が取りづらくなっていたり、相続人同士の関係が悪化していたりして、スムーズに手続を進めることができなくなってしまう恐れがあります。
このため、最初の遺産分割で、財産を漏れなく調査し、一通りの財産について、遺産分割協議書を作成したり名義変更を完了したりする方が望ましいと言えます。
とはいえ、このような話をすると、本当に専門家が行う調査と個人が行う調査にそんなに違いがあるのかと思われることもあるかもしれません。
そこで、ここでは、不動産の調査を例として、個人で行った調査で漏れが生じた実例を説明し、専門家に調査を依頼するメリットを具体的に説明したいと思います。
2 不動産の調査の漏れ
所有する不動産について、毎年5月前後に、各自治体から、固定資産税の納税通知書が届きます。
このため、固定資産税の納税通知書を確認すると、概ね、亡くなられた方がどのような不動産を所有していたかを把握することができます。
この事例では、専門家に依頼せずに、相続人ご自身で相続登記をしてしまおうと考え、固定資産税の納税通知書に記載された不動産を遺産分割協議書に記載して、遺産分割協議書の作成がなされ、相続登記も行われました。
遺産分割協議書では、所在〇〇、地番〇〇の土地、所在〇〇、家屋番号〇〇の建物というように、固定資産税の納税通知書に基づき、名義変更の対象となる不動産が特定して、記載されていました。
その後、相続登記を行った不動産が空き家になっており、今後も使用する予定がなかったため、この不動産を売却することとなりました。
このため、不動産屋に相談し、不動産の売却の仲介を依頼することとなりました。
この時、不動産屋からは、このままでは不動産を売却することができないという話がなされました。
というのも、不動産に接続する道路が亡くなられた方の私有地になっており、今後も道路を利用できるようにするためには、接続する道路の名義も変更しなければならないことが判明したからです。
ただ、この時点で、相続人の1人がスムーズに連絡が取れない状態になっており、道路部分の相続登記が難航しました。
このため、すぐには、不動産の名義変更ができず、不動産の売却も進めることができない状態になってしまいました。
道路部分については、固定資産税が非課税となっていることが多く、固定資産税の納税通知書に記載が出てこないことが多いです。
このため、固定資産税の納税通知書を参照すると、道路部分の名義変更が漏れてしまうことが多く、後から登記をし直す事態が発生してしまいがちです。
相続を多く取り扱っている専門家は、こうした事態を避けるため、名寄帳を取得し、固定資産税が非課税になっている不動産の調査を行います。
名寄帳を取得して不動産を調査することは、実務を多く取り扱っている専門家ならではの知恵であると言えます。
専門家であればこそ、実務上の落とし穴を把握した上で、漏れのない調査を行うことができると言えます。
このように、漏れのない調査を行えるようにすることは、専門家に相続財産調査を依頼すべき理由になります。