節税対策
相続税対策の注意点
1 中途半端な相続税対策は要注意
相続税対策としては、生前贈与、保険など、広く知られているものがいくつかあります。
これらの対策については、書籍を読んだり、ネットで検索したりすることで、簡単に情報を得ることができます。
近年では、他業種の人から、保険などの相続税対策についての紹介がなされ、これらに加入することをすすめられるケースも増えてきているように思います。
しかし、相続税対策は、正確な知識に基づいて行わなければ、まったく効果がないばかりか、かえって相続税額が増えてしまう結果を招きかねません。
中途半端な情報で相続税対策を行うのは、むしろ避けた方がよいともいえます。
ここでは、保険を例にとって、中途半端な情報で相続税対策をする危険性について説明したいと思います。
2 保険による相続税対策の注意点
生命保険(死亡保険金)には、500万円×法定相続人の非課税枠が設けられています。
参考リンク:国税庁・相続税の課税対象になる死亡保険金
そのため、保険に加入することにより、相続税が課税されない財産を作り出すことができ、相続税対策になります。
過去には、他業種の人からのすすめにより、相続税対策として保険に加入したという例と出会ったことが何件かあります。
しかし、そのうちのいくつかは誤った情報に基づいて対策がなされており、まったく対策になっていませんでした。
以下では、そのような相続税対策になっていない例をいくつか挙げたいと思います。
① 個人年金保険の契約がなされていた
保険が相続税対策になるのは、生命保険に加入し、被相続人が被保険者となっていた場合に限られます。
生命保険以外の保険に加入したとしても、500万円×法定相続人の非課税枠を利用することはできず、相続税対策にはなりません。
過去には、相続税対策として、生命保険ではなく、個人年金保険に加入していたという例がありました。
個人年金保険に加入したとしても、相続税対策にはなりません。
この例は、誤った知識に基づいて相続税対策がなされた例であるといえます。
② 相続人ではない人が保険金の受取人になっていた
500万円×法定相続人の非課税枠を利用することができるのは、相続人が受け取った生命保険に限られます。
このため、相続人以外の人が生命保険の保険金を受け取ったとしても、500万円×法定相続人の非課税枠を利用することはできず、生命保険の全額が課税対象にされてしまいます。
この点を知らない方は多いです。
過去には、子が相続人となる案件なのに、相続税対策になるとして、孫(代襲相続人ではない)が生命保険の受取人になっていたことがありました。
しかも、相続人以外が生命保険の受取人になると、相続税の2割加算がなされてしまうことが多く、生命保険の部分について、本来の1.2倍の相続税を納付しなければならなくなってしまうことが多いです。
参考リンク:国税庁・相続税額の2割加算
このように、誤った知識に基づく相続税対策は、まったく意味がないばかりか、かえって相続税が増えてしまうという事態を招きかねませんので注意が必要です。
③ 非課税枠についての誤解から、非課税枠を使い切ることができなかった
先述のとおり、相続人が受け取る生命保険については、500万円×法定相続人の非課税枠が設けられています。
これを見て、1人の相続人が受け取る生命保険については、必ず500万円以下にしなければ生命保険が課税対象になってしまうという誤解をされる方がいらっしゃいますが、そうではありません。
実際には、相続人全員が受け取る生命保険の合計額が500万円×法定相続人であれば、その生命保険を受け取るのが相続人のうちの誰であったとしても、全額を非課税とすることができます。
分かりにくいと思いますので、A、B、Cの3名の子が相続人である例で考えたいと思います。
この場合、500万円×法定相続人の非課税枠は、1500万円になります。
そして、相続人全員が受け取る生命保険の合計額が1500万円以下であれば、たとえば、Aが1500万円の生命保険をすべて受け取ったとしても、生命保険は全額が非課税となります。
Aが受け取る生命保険を500万円以下にしなければ、生命保険が課税対象になってしまうというわけではありませんので、ご注意ください。
過去には、上記の誤解から、Aのみが生命保険を受け取るものとしつつも、Aが受け取る生命保険を500万円に設定し、非課税枠を1000万円も余らせてしまっている例がありました。
このように、誤った知識に基づいて相続税対策を行うと、対策の効果が最大限に発揮されないという事態を招いてしまいかねません。
相続税対策をお考えの方は、相続税に詳しい専門家を選んで相談することをおすすめします。